こんにちは😊
大田区平和島にある歯医者
東京流通センター歯科クリニック ブログ担当です。
今回は食品とう蝕の誘発性についてお話していきます。
1.う蝕は食生活習慣病
習慣的に歯磨きを実践しているにも関わらずう蝕に罹患する人がいたり、砂糖の摂取量が多くてもう蝕に罹患しない人がいます。これは、う蝕は感染症ですが、発症にはさまざまな因子が複雑に絡み合う多因子性疾患のためです。う蝕はミュータンスレンサ球菌群による感染症ですが、その発症要因として主要なものが食生活習慣です。
①不溶性グルカン産生に関与する砂糖の摂取量
②プラークにおける酸産生に関与する糖類
③食事や間食の摂取方法
④睡液分泌を促進させる食事
⑤食物の粘着性や硬さなど、食物に関わる因子
以上が蝕の発症に大きく関与しています。
そのため、う蝕は食生活と密接に関連した生活習慣病の1つとして考えられております。
※発酵性糖質:プラーク中の細菌によって乳酸などの酸を産生する糖質をいいます。
2.ショ糖とう蝕の関連性
1) ショ糖はう蝕の原因物質
砂糖の主成分はショ糖です。ショ糖は発酵性糖質の中で最もう蝕誘発能が高い食品です。
砂糖を摂取すると、口腔内に存在するミュータンスレンサ球菌によりショ糖から不溶性グルカンが産生されます。
不溶性グルカンは粘着性をもち、歯の表面でほかの口腔細菌とともにプラークを形成します。
歯に付着したミュータンスレンサ球菌は、プラークの中で発酵性糖質を原料に乳酸などの酸を産生しますが、これにより歯質が脱灰*され、う蝕を形成します。
※ショ糖(スクロース):ショ糖はプラーク形成能と酸産生能をもちますが、グルコースやフルクトースはプラーク形成能はもたず、酸産生能をもちます。また、キシリトールはプラーク形成能と酸産生能のどちらももちません。
※脱灰:歯の無機質成分であるヒドロキシアパタイトが、酸によってカルシウムイオンとリン酸イオンになって溶けることをいいます。
2) ショ糖の摂取量とう蝕との関係
ショ糖摂取量とう蝕罹患との関連を明確に示した調査・報告例には
①47か国について国別に調べ、国民1人あたりの砂糖消費量と 12歳児のう蝕発生率(DMF 歯数)との有意な相関性を示した Sreebny (1982)の研究
②第二次世界大戦前後の砂糖消費量とう蝕経験者率を調査した疫学的報告
③オーストラリアのHopewood House の調査研究による食生活とう蝕発生に関する報告
これらの報告は、砂糖摂取量の増加がう蝕発生に影響することを示しています。
そのため、う蝕予防の1つとして、歯科保健指導による砂糖の摂取量(摂取回数)の制限が行われてきました。
近年の調査結果では,1人あたりの砂糖消費量が日本より数倍高い諸外国でう蝕の発生率が日本の1/2~1/3と低く、必ずしも砂糖の消費量とう蝕の発生率は相関しません。
しかし、この一見矛盾する結果は、う蝕と砂糖の関係を否定するものではなく、う蝕が多因子性疾患であるため、フッ化物や代用甘味料の応用および規則的な食生活などによって、その発症が抑制された結果によるものと考えます。
3) ショ糖の摂取頻度とう蝕との関係
1日3回の食事のたびに、食事に含まれる発酵性糖質によってプラークのpHは臨界 pH* (pH5.5)以下に低下し、歯のエナメル質が脱灰されます。
しかし、食事のときに分泌される睡液によってプラーク中の酸は中和され、カルシウムイオンとリン酸イオンが再び沈着し、歯は修復(再石灰化)されます。
食事と食事の間に頻繁に間食をとると、歯の脱灰が再石灰化を上回り、初期のう蝕が発生します。
また、就寝前に砂糖などの発酵性糖質を摂取してそのまま眠ってしまった場合、睡眠時は唾液の分泌が抑制されるため、プラークのpHは低下したまま回復せず、翌朝まで脱灰が進行します。
これらのことから、発酵性糖質のだらだらとした不規則な摂取を避け、1日3回の規則正しい食生活を送ることが、う蝕発生のリスクを下げることがわかります。
発酵性糖質がう蝕を誘発するという根拠は、発酵性糖質がプラークに作用すると、プラークの pHは臨界pHである 5.5 以下に低下し、う蝕活動性との関連を明らかにした Stephan カーブによるものです。
※臨界pH:歯の無機質が脱灰されるpHのことです。
3. う蝕予防のための食品の摂取方法
う蝕の発生には食生活が密接に関連しています。そのため、う蝕予防のための食品の摂取方法では、次のポイントに留意したいです。
(1)「何を食べるか」だけではなく、「どのように食べるか」、「いつ食べるか」という視点で食事や間食の摂取を考える。例えば、砂糖など発酵性糖質は食事時に摂取し、「だらだら食べ」をしない。
(2)唾液は自浄作用、緩衝(酸中和)作用、再石灰化促進作用を有し、う蝕の発症や進行を抑制します。そのため、生野菜、キノコ、海藻などの食物繊維を多く含む食品を取り入れるなど咀嚼回数を亢進させ、唾液分泌量を増加させる献立を工夫する。
(3) 間食にはプラーク中で酸を産生しない非う蝕性甘味料を使用したキャンデイー、チューインガム、スナック菓子などを選ぶ。
(4) 養育者の口腔からのミュータンスレンサ球菌感染を防ぐため、食器や食具を子どもと共有しない。
(5) チョコレート、キャラメルなど糖類が多く、粘着性の高い食品を摂取した後は、ブラッシングをする。
う蝕子防のための食品の選択には、「特定保健用食品(トクホ)」マークや「歯に信頼」マークが役立ちます。
「特定保健用食品(トクホ)」マークは、消費者庁が食品の効果・効能を認めた特定保健用食品のみに表示することができる許可マークで、歯に関しては「むし歯の原因になりにくい食品」、「歯を丈夫で健康にする食品」の表示が許可されています。
また、「歯に信頼」マークは、国際トゥースフレンドリー協会が食品テストを行い、摂取後 30分以内にプラークのpHを5.7以下に低下させない食品に対してのみ付けることが許可されたマークです。
4.う蝕予防とシュガーレスガム
①「シュガーレス」、「シュガーフリー」、「ノンシュガー」、「無糖」は、すべて同じ高味で使われる強調表示です。糖類(単糖類または二糖類)が食品100g(または飲料 100ml) 中に0.5g未満の場合に使用することが許されています。
②WHO(世界保健機関)は、う蝕のリスクと食品の関連性についてのエビデンスをランク付けしており、シュガーレスガムはキシリトールよりも高い評価を得ています。
③トクホマークのついたシュガーレスガムにはエナメル質の再石灰化促進効果が期待できるCPP-ACP (カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム複合体、商標名リカルテント) やPOs-Ca(リン酸オリゴ糖カルシウム)などのカルシウム素材が配合されたものがあります。また、カルシウム素材にプラスしてフッ化物(緑茶エキス)が配合されたガムも販売されており、これら高機能シュガーレスガムが注目されています。
このような高機能シュガーレスガムなどをうまく取り入れ、「どのように食べるか」、「いつ食べるか」という視点で食事や間食の摂取を考えるとう蝕の発生が抑制されますので試してみてください。
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